たとえば「健康で文化的な自分自身の望む人生」を生きるというテーマを考えるとします。まず思い浮かぶのは国や地域が提供する医療・福祉・介護・年金といった社会制度です。それから、自分自身にとって「健康で文化的な人生とは何か」を考えて、自分の意思と活動を積み重ねて、それを主体的に実現して行くという能動的要素も必要です。
しかし、ひとたび回復し切れないで病や障害を被ってその後の人生を送らなければならなくなると、生活や活動制限を負った新たな自分自身を再構築して生きて行くための、社会的インフラは未成熟で、自己実現が大きく制約されてしまうという現実があります。医学の進歩と国民皆保険制度により、私たちの国は長寿国になりましたが、同時に回復し切れないで病や障害を被って、その後の人生を送らなければならない人々がどんどん増えています。
個々に降りかかった困難な状況を受容して生きて行こうとする、数多の意思に同期して、社会もまた変わって行かねばならないのではないでしょうか。 "病や障害"を"健康や正常" の対極に置き、 "健康や正常"への回帰をめざす"疾患克服型"のアプローチだけでなく、"社会的不利や生活のし辛さ"が生じないように、社会のあり方を変えシステムを整えることによって、"健康や正常"と"病や障害"を一連の概念として捉え、「暮らしの場」で健康感や達成感の獲得をめざす"QOL追求型"のアプローチが、WHOをはじめとして世界的な基本理念として定着しつつあります。
今後、自宅に限らず、介護施設、グループホームや有料老人ホーム、高齢者住宅といった多様な居住様式全般を「暮らしの場」と捉えて、そこに個々のQOLをOUTCOMEとした、医療・介護・生活支援サービスを一元的に届けることが必要となります。
食べること、排泄すること、移動すること、身支度をすること、家庭での役割を担うこと、さらに人生を豊かにする多様な社会資源にアクセスするために、今、どのように他職種がかかわれるのかが問われているのであり、救命を担う専門医から、生活を担う福祉職に至るまで「生活機能」の維持・向上の視点からデザインされた、あらたな地域ケアを発想する必要があると考えます。
30年後には年間死亡者170万人の多死の時代がきます。現在、暮らしの場でなくなる方が2割、病院でなくなる方が8割ですが、近い将来この比率が大きく変化することが予測されます。
暮らしの場で死を迎えるという決断を支えることは、容易なことではありません。 いつでも必要な医療が提供されるという安心、なじみの人々に見守られているという安心、病院にいるのと同じような安心を暮らしの場に実現しなければなりません。
今後、多様な価値観をもつ団塊の世代を迎え入れる高齢社会において、尊厳ある生と死を支えるためには、既存の技術だけでなく、自然科学・社会科学・人文科学、さらには哲学・宗教・芸術といった多様な分野の協調によって、全人的知識の学際的融合を図り、専門職の力量を培って行くと同時に、ボランティアの方々や地域資源が一致協力して、療養者を支援する体制を作ることが不可欠だと考えます。
ケアフルでは「療養」を病や生活機能制限を乗り越えて自己実現をめざす人々の主体的活動、療養者に寄り添い、理念と技能、連携を駆使して支える人々の活動を「ケア」と捉え、その包括的支援の第一歩として、多様なコミュニティーを開催しています。皆様の参加により、さらに多彩なコミュニティーが立ち上がり、現場活動の一助となることを願っています。
ケアフルを実戦的アウトプットを生みだす活動の場に育てることをめざして、日々企画運営しています。 ぜひお友達と一緒に参加してください。
ケアを支える人々とは?
自ら療養をする人々の自立を支え、心と身体と生活が健やかであるよう支援する人々のこと。
多職種協働とは?
様々な職種の人々が、連携・協力して、暮らしの場でのケアを行うための理念とインフラを包括した概念のこと。


